研究概要 |
平成9年に引き続き、微熱、全身倦怠感、関節痛、筋肉痛や咳、痰、咽頭痛などの呼吸器症状、あるいは不定愁訴により日本大学板橋病院内科を受診した患者、および板橋病院保健科、駿河台病院健診センターを受診した人間ドック受診者について、全血液中より抽出したDNAについて、Coxiella burnetii (Cb)outer membrane ComI遺伝子を増幅するプライマーを用いてnested PCRによりCbの遺伝子を検出した。上記の患者58名のうち19名(33%)にCb遺伝子を検出し得た。また、19名の陽性患者のうち18名(94%)が飼育動物との密接な関わりをもっていた。一方、人間ドックを受診した健常対照群67名においても、患者群に比較しその割合は、有意に低かったが5名(約7,5%)にCb遺伝子を検出し得た。従って、これらの患者においてCb遺伝子の検出が健常対照者と比較して明らかに高率であり、上記の症状などを有するものや、不定愁訴があり動物の飼育経験のある原因不明の患者においては、Q熱の病態を考慮にいれる必要があると考えられる。また、これらのCb遺伝子陽性患者の一部にミノサイクリン(ミノマイシン)を投与して、症状およびCb遺伝子の検出の推移を検討したところ、投与後1カ月頃より症状の一部改善とともにCb遺伝子の検出が認められなくなる所見が確認され、今後症例を重ねて検討する必要があると考えられた。一方、日本大学板橋病院および個人医院の産科において分娩を行った患者より採取した70の臍帯血について、同様にCb遺伝子の検索を行ったが、2例を除き大部分はCb遺伝子の検出を認めなかった。検索し得た限りでは、臍帯血におけるCb遺伝子の検出を試みた報告は我々が最初であったが、これらの結果より、Cb感染が後天的に獲得される可能性が高いことを示唆したのみならず、胎盤を介したCbの母児感染の可能性についても検討をする必要があることが示唆された。 これらの概要は、Fifth Asian Conference of Clinical Pathology(高知)で報告し、FEMS Immunology and Medical Microbiology(21 No.2:139-144,1998)へ投稿した。
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