研究概要 |
遺伝性球状赤血球症患者(36例)を対象として、平成9年度はankyrin遺伝子(ANK-1)のN端側のプロモーター領域およびband3結合領域(89Kドメイン)をコードしている遺伝子領域を解析した。患者白血球よりDNAを抽出し、2ヶ所のプロモーター領域および23個のエキシン(Exon1-23)をPCR(polymerase chain reaction)法にて増幅した。次いで増幅DNAをSSCP法(single strand conformation polymorphism法、非RI、銀染色法)にて分析し、遺伝子変異の有無をスクリーニングした。変異の存在が疑われる領域については、その都度DNAシークエンシングを行い、変異の存在を確認した。その結果、現在までに7種類のankyrin遺伝子変異を見い出した。これらのうち5つの変異はsilent mutation(N105N:ACC-AAT,P199P:CCG-CCA,G691G:GGC-GGT,P737P:CCC-CCG,T783T:ACC-ACT)であり,健常者にも同一の変異が確認され、本症の発症には関与しないpolymorphismであると考えられた。また既に報告されているpolymorphismであるミスセンス変異(R619H:CGT-CAT)が1例にみられた。残りの1変異はミスセンス変異(G89E:GGG-GAG)であり、健常者48例では検出されなかった。父親が同一の変異をもっていたが臨床的にはHSではないことより単なるpolymorphismの可能性も高いが,変異蛋白の発現や機能異常の有無について更に検討する必要があると考えられた。当初の計画どうり概ね順調に研究が進行しており、次年度はさらにSpectrin結合ドメイン(62K)の解析を進める予定である。
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