研究概要 |
遺伝性球状赤血球症患者(36例)を対象として、平成10年度はankyrin遺伝子(ANK-1)のspectrin結合領域(62Kドメイン)をコードしている遺伝子領域を解析した。患者白血球よりDNAを抽出し、11個のエキソン(Exon24-34)をPCR(polymerase chain reaction)法にて増幅した。次いで増幅DNAをSSCP法(single strand conformation polymorphism法、非RI、銀染色法)にて分析し、遺伝子変異の有無をスクリーニングした。変異の存在が疑われる領域については、その都度DNAシーケンシングを行い、変異の存在を確認した。その結果、現在までに5種類のankyrin遺伝子変異を見い出した。これらのうち2つの変異はナンセンス変異(E886X:GAG-TAG,K1140X:AAG-TAG)であった。36例中、前者が1例、後者が2例認められ、これらの変異はankyrin産生低下により本症を発症する変異と考えられた。またミスセンス変異(I1075T;ATC-ACC)が2例にみられ、いずれもホモ接合例であった。従ってこの変異に関しては更に変異蛋白の発現や機能解析が必要と思われた。残りの2変異はアミノ酸置換の起こらないsilent mutation(S1162S:AGT-AGC,Al367A:GCT-GCC)であり、本症の発症とは無関係の単なるpolymorphismと考えられた。当初の計画どうり概ね順調に研究が進行しており、次年度はさらにC末端の調節領域(55K)の解析を進め、この3年間で明らかになったankyrin遺伝子変異についてまとめる予定である。
|