研究概要 |
遺伝性球状赤血球症患者(36例)を対象として、平成11年度はankyrin遺伝子(ANK-1)の調節領域(55Kドメイン)をコードしている遺伝子領域を解析した。患者白血球よりDNAを抽出し、8個のエキソン(Exon35-42)をPCR(polymerase chain reaction)法にて増幅した。次いで増幅DNAをSSCP法(single strand conformation polymorphism法、非RI、銀染色法)にて分析し、遺伝子変異の有無をスクリーニングした。変異の存在が疑われる領域については、その都度DNAシーケンシングを行い、変異の存在を確認した。その結果、4種類のankyrin遺伝子変異を見い出した。これらのうち2つの変異はミスセンス変異(E1412A:GAG-GCG,T1574M:ACG-ATG)であった。36例中、前者が2例、後者が1例認められ、いずれもヘテロ接合例であった。また1例にイントロン39の8塩基欠失が認められたが、スプライシングの異常をきたす可能性は低い変異と考えられ、病因との因果関係はないと思われた。残りの1変異はアミノ酸置換の起こらないsilent mutation(V1755V:GTG-GTA)であり、本症の発症とは無関係の単なるpoly-morphismと考えられた。当初の計画どうり概ね順調に研究が進行し、この3年間でプロモーター領域を含むankyrin遺伝子の全エキソンを解析し、明らかになったankyrin遺伝子変異は17種類に達した。
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