1996年4月から1997年3月に救世軍清瀬病院緩和ケア病棟に入院した患者95名中、在院期間14日以上180日以内で、死亡退院した67名を対象として病歴調査を実施中である。調査に先立ち、4事例の病歴から、病状進行の過程と心理的変化について詳細に情報収集し、分析した。その結果、病状の進行や新たな症状の出現状況と、不安や動揺あるいは希望を示す表現との関連を把握する必要が示唆された。そこで、67名についての調査項目は、個人の背景情報(病名、転移部位、入院期間、入院時主訴、病名認知、本人・家族の希望、家族構成など)のほか、病状経過、活動状況(日常の過ごし方やイベントなど)、心理面を表現する会話や行動の記録、看護ケアの内容とした。67名の概要は、男性30名、女性37名、平均年齢65.8歳、平均在院日数38.5日である。原疾患は多様であり、上位は肺癌、乳癌、胃癌であった。また5割以上に転移がみられた。病状経過では、入院後数日ないし1週間前後の時期に、7日程度、身体的な苦痛症状が緩和された「安定期」が現れる傾向がみられた。しかし、この「安定期」に心理面も安定しているとは限らない。入院時には何らかの意欲や、安堵感を表現する事例が比較的多いが、その後は、希望や感謝の表現と、不安や寂しさ、怒り等の表現が錯綜する傾向にあった。どの時期にも患者は不安を抱いていると考えられるが、それに対する看護ケアの記載は少ない。散歩や外出・外泊等の活動は、身体的な苦痛症状を有する時期にも実施されており、精神面の援助につながっていると推測された。この67名については詳細な質的データ収集となったが、今後は調査内容を精選し、多数の事例を対象とすることを検討の予定である。
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