1996年4月から1997年3月に救世軍清瀬病院緩和ケア病棟に入院した患者113名を対象として、死までの受容過程と提供されたケアに関する病歴調査を実施した。在院期間14日以上90日以内で死亡退院した60名について特に、看護記録、医師記録を中心とした詳細な病状経過および心理的経過の情報収集を行った。調査項目は、個人の背景情報(病名、転移、入院期間、入院時主訴、病名認知、本人・家族の希望、家族構成など)のほか、病状経過(意識レベル、疼痛、呼吸困難、嘔気など)、主な治療・看護ケア、心理的経過(会話表現、感情表現)などである。心理的経過の数量化は、前向きの肯定的な内容表現を正、消極的・否定的な内容を負として、各表出の程度を0〜3で示した。1例毎に1日毎の症状の程度と感情表出の程度を数量化し、経日変化を図示した。60名の概要は、男性27名、女性33名、平均年齢65.4歳、平均在院日数38.0日であった。入院後平均5.9日に約5日間、身体的な苦痛症状が緩和された「安定期」がみられた。「安定期」に心理面も安定しているとは限らなかった。60名の心理的経過は、「肯定的な気持ちが支配的」、「否定的な気持ちが支配的」、「両者の拮抗」、「表現が少ない」という4つの特徴に大別された。また、死についてや治療・ケアに関して、肯定的とは言えないが、尊厳ある生への決定に患者の意思が強く表現される場合があり、正負とは異なる座標軸の設定が必要と考えられた。この点も考慮し、今後のClinical Auditにつながる調査方法試案を作成した。
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