要介護老人を生ずる最大の原因は脳血管疾患であるが、大腿や腰椎の骨折が次第に原因としての重要性を増しつつある。この中で大腿骨頸部骨折は、患者の活動性を著しく制限し、寝たきりや老人痴呆等の合併症を引き起こすため、老人骨折の中でも極めて重要な骨折である。本研究は特に高齢者の骨折に結びつく可能性の高い深度視力や対比視力等を生活関連視機能として取り上げ、大腿骨頸部骨折患者と非骨折患者対照の生活関連視機能を測定したの訓練とその効果の検討を行う。これらを通して高齢期の骨折における有効な看護指針を得ることを目的とした。 調査対照は、療養型病床群をもつ病院に大腿骨頸部骨折で入院中の患者35人と対照群として慢性疾患患者35人。調査内容は、生活関連視機能の指標として、ビジョンコントラストテスト、両眼視機能、視力を測定した。体格、体力指標は身長、体重、BMI、握力、呼吸機能を測定した。生活関連要因として、既往歴、骨折歴、転倒歴、運動週間、等を聞き取り、IADL、入院前後のADLを看護婦が聞き取った。今年度は、これらのデータベースを作成した。 平均年齢は骨折患者と非骨折患者それぞれ81.8±7.1歳、81.9±6.5歳であった。体格指標の身長、体重、BMI、体力指標の握力、呼吸機能においても差は認められなかった。生活関連視力はビジョンコントラストテストの結果、骨折患者は非骨折患者に比較して視機能がやや低い傾向が示された。このことから、大腿骨頸部骨折患者と非骨折患者の生活関連要因としての生活視機能を考慮した看護指針を立案していかなければならないことが示された。
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