本研究では高齢期の骨折における有効な退院指導の看護指針を得ることを目的に、骨折患者と非骨折患者の視覚の認識力の評価としてコントラスト感度を測定し、生活要因との関連を検討した。 調査対象は療養型病床を有する病院に入院中の高齢の大腿骨頚部骨折患者と慢性的な障害を有する非骨折患者の2群で、初年度の29ペア58名に各10ペアを加え、性と年齢をマッチさせたそれぞれ39ペア78名である。対象者には事前に本調査の目的、効果等詳細な説明を行い、受診者全員から承諾書を得た。なお、痴呆等による認知障害を有するものは除外した。コントラスト感度の測定はVistech社製Vision Contrast Test System(AU-6500-03)を用いた。また、同時にWoc社製多目的両眼視スクリーナー(BETTYPE)による視力測定を行った。この検査による視力は骨折群、非骨折群とも有意差はなかった。ライフスタイルについては、看護婦が面接により、入院前の日常生活および労働状況、運動歴、骨折の家族歴、喫煙、牛乳および他の栄養摂取状況、過去の骨折歴、転倒歴等を詳細に聞き取った。体格指数は身長および体重、BMI、Kee heightを測定した。体力指標としては握力、閉眼片足立ち、努力性肺活量、1秒率等を測定した。また、入院時ADLと現在のADLを比較した。コントラスト感度は、骨折患者は非骨折患者に比較していずれの周波数領域も低下していた。生活因子別にみた骨折患者と非骨折患者の比較では、転倒歴を有する者および遠近感がなくなったと回答した者は骨折患者に多い傾向であった。これらのことから退院指導の指針については、物の形や距離が認識できるような対策を具体的に提示する必要性が示された。また、転倒歴のある者は骨折の受傷機転である転倒予防の保健指導を強化する必要性が示された。
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