本研究は自立型在宅ケアの有効性を実証し、施設型、あるいは生命維持型に比べた自立型看護ケアスキルの特徴、及び教育システムの差異の解明を目的として3年計画で実施した。3年目の本年度は、自立型ケアスキルの教育プログラムと研修システムの構造と特徴の解明を目的とした。本研究期間内では、カナダBC州の地域呼吸ケア領域に焦点をしぼって資料を収集し、分析を試みた。その結果、以下の5点が明らかになった。 (1)BC州全域を対象とした中央研修機関・BCリハセンターがあり、その地域呼吸ケア部門で4つの領域からなる地域呼吸管理プログラムが開発された。すなわち呼吸療法サービス、呼吸器の保守管理、呼吸サプライの供給と教育研修である。 (2)BCリハの呼吸ケア教育プログラムは人工呼吸器長期使用者を地域へ円滑に移行させる目的で急性期から開始、教育対象はICUのケアスタッフや家族のみならずクライエントを主体とするプログラムである。 (3)地域呼吸ケア教育は看護職、クライエント、家族、介助者、さらに外出時のボランティアを対象に適切な呼吸ケア知識とスキル習得を目的として開発したプログラムによる実施である。 (4)ケアスキルの質的維持向上を目的にスタンダードとガイドラインが規定され、呼吸ケア研修に関する看護職(RN)、准看護職(LPN)、ケアワーカ対象のケアスキル認定プログラムが開発実施されている。 (5)地域呼吸ケア教育プログラムは、地域で生活する人工呼吸長期依存者のセルフケア能力を向上すると共に、人工呼吸の安全性を重視したプログラム構成である。 以上、カナダBC州の地域呼吸ケア教育プログラムに加えて、同じく在宅ケアの先進国デンマークにおける在宅人工呼吸ユーザに関する生活実態調査レポートの分析から、自立型在宅ケアはケア受給者の自己決定権を尊重し、かつ当事者をユーザとしての活用が安全性のみならず生活の質的向上の必要条件であることも明らかにされた。
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