本研究は神経障害による人工呼吸長期依存者を対象に自立型在宅ケアの有効性を実証し、施設型、あるいは生命維持型に比べた自立型看護ケアスキルの特徴、及び教育システムの差異の解明を目的として3年計画で実施した。 高位脊髄損傷による人工呼吸長期依存者を対象に自立型在宅ケア供給のカナダBC州と生命維持型ハイテク在宅ケアの日本の事例を比較分析した。その結果、どちらも完全四肢麻痺の人工呼吸器使用者でありながら自立支援型在宅ケア供給の事例は、終日ベッド上生活の生命維持型に比べ、生活の質が著しく高く、呼吸ケアや介助の必要度が顕著な低下を示した。 つぎに生命維持型ケア供給の事例を対象に人工呼吸依存の安全性の維持を目的としてカナダBC州で開発された呼吸発声訓練プログラムの介入研究を実施した。その結果、(1)生命維持型ケアでは自力呼吸なしと人工呼吸器に24時間依存状態であった対象者が最短で数分、1例は数時間、他の1例は24時間自力呼吸が可能になった。(2)気管切開のため無声と諦めていた対象者が本プログラムで1例を除き、全例が発声可能であった。発声不可の1例もPMスピーキングバルブの使用で長時間会話が可能になった。(3)本プログラムは人工呼吸の事故予防にも有効性が示唆された。 自立支援型ケアスキルの教育プログラムは、(1)急性期から開始し、看護職や家族のみならず人工呼吸器使用者が重要な教育対象、(2)ケアスキルの質的維持向上のためケア専門職対象の認定プログラムが開発実施、(3)地域で自立した生活を可能にし、人工呼吸の事故予防、安全性を重視したボランティア対象のプログラムも開発実施された点に特徴がある。さらに自立型ケアスキルはケア受給者の自己決定権を尊重し、かつ彼らをユーザとして活用することが安全性のみならず生活の質的向上の必要条件であることも明らかにされた。
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