研究概要 |
本研究では,褥瘡の発生機序を解明するため,体重により圧迫を受ける部位とそうでない部位の皮膚毛細血管と弾性線維の分布の違いを明らかにすることを試みた。研究方法として,平成9年度〜10年度に引き続き,献体として提供された老人遺体2例について,人間が臥床したら褥瘡好発部位となる仙骨部,皮下組織が厚く臥床してもほとんど褥瘡発生がみられない大殿筋中央部,坐位をとることによって,日頃から常に圧迫を受けている坐骨部の皮膚毛細血管と弾性線維の構築を光学及び電子顕微鏡で調べ,併せて表皮や真皮乳頭の形態も検討した。その結果,仙骨部では大殿筋中央部や坐骨部に比べて表皮がやや厚く,多数の乳頭が観察された。毛細血管の形状は手指のそれと類似しており,真皮乳頭層から乳頭内に直接的に侵入し,先端部からUターンするループ状であった。大殿筋中央部では表皮は薄く,指状の真皮乳頭はほとんどみられず,真皮の表面はゆるやかなカーブを描いていた。毛細血管は,真皮乳頭層内に散在して分布しているにすぎなかった。坐骨部では,部分的に指状の真皮乳頭がみられ,毛細血管の密度は,仙骨部と大殿筋中央部との中間の様相を呈していた。また弾性線維の分布は,坐骨部,大殿筋中央部において密で,仙骨部では粗であった。
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