研究概要 |
褥瘡を予防するには,先ず,褥瘡がなぜ発生するのかを明らかにする必要がある。しかしながら,今まで行われた研究は,動物モデルを使った実験であったり,人間の場合は,皮膚血流の測定という機能面からの検討であり,人間の褥瘡に関連した形態的研究はほとんどみられない。そこで先ず,外からの圧迫を受ける部位の皮膚の形態的特徴を明らかにする目的で,褥瘡好発部位とされている仙骨部と坐骨結節部,そうでないとされている大殿筋中央部の皮膚採取を献体遺体5例から行い,皮膚毛細血管の分布,弾性線維の分布を光学顕微鏡及び電子顕微鏡より比較した。そして,同じ好発部位とそうでない部位の皮膚血流測定をレーザードプラー血流計を用いて健常者2名で行い,皮膚毛細血管の分布状態と皮膚血流の関係を検討した。その結果,仙骨部は表皮も厚く,真皮乳頭も指状の形のものが整然と密に分布しており,その下にある毛細血管も豊富であった。これは皮膚血流でも確かめられ,3部位の中では一番多かった。しかし,弾性線維は少なく,皮下組織が薄いことと考え合わせると,圧迫に対する組織の回復力が弱く,このことが褥瘡発生につながりやすいのかも知れない。一方,大殿筋中央部は表皮は薄く,真皮乳頭はみられず,表面は平坦で,ところどころに台地状の乳頭が存在していた。したがって,その下にある毛細血管も散在的に存在しているのみであった。このことは皮膚血流でも確かめられ,3部位で一番少なかった。しかし,弾性線維は豊富に分布していた。坐骨結節部では,真皮乳頭は指状と台地状が混在していた。したがって,毛細血管の分布も仙骨部と大殿筋中央部との中間の様相を呈しており,皮膚血流でもそれが裏付けられた。弾性線維は大殿筋中央部とほぼ同程度であった。
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