研究概要 |
本研究の目的は慢性状態の学童の自己概念の特徴とそれらに関与する因子を特定することである。対象は(1)インスリン依存性糖尿病の学童33名(7〜13歳)とその両親および主治医,(2)養護学校に在籍する運動障害児34名(8〜13歳)とその両親および担任教師である。学童には簡易化された日本版SPPCによる自己概念測定と質問紙を実施した。質問の内容は家族の状況,治療状況,自覚的健康状態,ソーシャルサポート,現在の関心事と将来への希望などである。両親には子どもの特徴,子どもへの関わりと養育方針,子どもに関する心配,両親の健康状態や満足などの質問紙,教師には児童行動評価表,主治医には学童のコンプライアンスや両親の協力度などから構成された質問紙の記入を依頼した。 その結果,(1)標準群の成績(前田,1999)と比べ,糖尿病群の自己概念は身体的外見,学業能力,自己価値の3領域で有意に高く,運動障害群は身体的外見,行動,社会的受容,自己価値の4領域でより高かった。(2)運動障害群に関する教師評価は,標準群と比べ,身体的外見では有意に高かったが,運動能力の領域では有意に低かった。(3)自己価値と有意な相関があった領域は,糖尿病群では行動,身体的外見,学業能力の順であったが,運動障害群では身体的外見,学業能力,運動能力,行動の順であり,両群間に差異があった。(4)糖尿病群の自己価値と関連があった因子は家族のサポートと教師のサポートの程度であったが,運動障害群では明確な関連因子は特定できなかった,これは運動障害群の属性や背景がより多様かつ複雑であったためと考えられる。さらに,対象をコントロールして調査する必要性が示唆された。
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