研究概要 |
平成10年度は、長野地区、広島地区に行った中高年女性健康実態調査のまとめをおもに行った。まず、本研究の第1の特色は、閉経期段階別に「閉経前期」「閉経周辺期」「閉経後期」に正確に分類していることである。その閉経段階別に体験している症状の特徴を明らかにするために因子分析を行い、4因子「気分の変調」「知覚運動系不快症状」「内分泌系不快症状」「血管運動系不快症状」を抽出し、累積寄与率は41.1%であった。これらの症状の閉経段階別の特徴的が現れ方のいくつかのパターンがみいだされた。1閉経周辺期を境に訴えが多くなっていく項目、2、閉経後期2-4年目から訴えが多くなっていく項目、3、その後訴えが維持されていく項目、また、4、閉経周辺期、閉経後期2-4年を症状の訴えのピークにして、訴えが低下していくという特徴を持っていた。これらは、閉経時期のエストロゲンレベルの低下に起因する症状の出現のみを表すものではなく、エストロゲンレベルとは関連がない症状の訴えがあることを支持する結果であった。さらに、症状がどのような因子によって影響を受けているかをするために、身体的因子、社会文化的因子」、心理的因子との相関関係を明らかにすることで、関連を明らかにした。その結果、「気分変調」は、すべての閉経段階で現在の健康状態の認識、現在のストレスの有無認識、PMS症状有無の認識と軽度から中等度の相関(r=-0.217〜-0.526,p<0.01)があった。このことは、「気分変調」は閉経段階別というエストロゲン変化による状態とは関連ない中高年女性の特有の症状であることが示された。「血管運動系不快症状」はこれとは異なり、社会文化的、心理的因子とは有意な相関がなく、閉経周辺期、あるいは閉経後期2-4年に症状のピークがあり、エストロゲン変動が有意に関連する因子であり、中高年女性の症状は、医学的モデルのみでは捉えられないことが支持された。
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