高齢者の嚥下障害に対して呼吸嚥下協調訓練を自律的に維持する方法を開発することが目的である。嚥下に問題のある2人の被験者を対象に、声門上嚥下訓練法の教示とコンピュータディスプレイ上の呼吸曲線のフィードバックを介入条件とした効果を検討した。測定装置として、Maclab/2e・MaclabV3.5・BioAmp、PowerBook2400c/180を使用した。嚥下時の舌骨上筋群の筋電図と熱センサーを用いて鼻孔部での呼吸曲線を測定し、これらがリアルタイムにディスプレイ上に表示された。実験1では、嚥下量の増加に伴い分割嚥下となる21歳の女性を被験者として、シェイピングを実施した。嚥下量に伴う嚥下反射の回数を25回測定した結果、訓練開始前は2mlでは平均1.0回、4mlでは1.7回、6mlでは2.3回、8mlでは3.0回、10mlでは3.4回であった。実験では、5回の水嚥下を1セッションとして分割嚥下の発現回数を測定し、5セッション(1ブロック)において各1回以下となり安定すれば、2mlを増加させた次のブロックへ進んだ。ベースライン条件のみで6mlまでは改善したが、8mlでは全てが分割嚥下であったため介入条件を実施した。その結果、各セッション全てが1回以下の分割嚥下となり効果を認め、10mlでも同様であった。実験2では、呼気の終了時に嚥下反射を惹起する呼吸型の70歳の女性を被験者として、ABABデザインを実施した。吸気の終了時に嚥下反射を惹起する呼吸型が、誤嚥を起こしにくいことから安全な呼吸型とされている。10回の水嚥下をlセッションとして、十分な吸気後に嚥下反射が生じる呼吸型の出現回数を測定した。呼吸型は、吸気、呼気、嚥下性無呼吸時間の所要時間によって確定した。その結果、呼吸曲線のフィードバックによる効果を認めたが般化はされなかった。フィードバックと感覚情報の提供を重ねることで般化されたことを確認した。
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