児童虐待への援助における保健婦の役割を明確化するために、保健婦の家庭訪問における援助内容の構造化を試みた。そのためにまず文献検討を行い、続いて実際に虐待への援助経験をもつ保健婦経験5年以上の保健婦に面接調査を実施した。 1.文献検討からの知見 Child abuseへの保健婦の援助として先進的におこなわれている英国やアメリカ合衆国の活動について検討したこれらの国において、保健婦の家庭訪問が虐待の援助に有効であることはOlds D.L.らによって示されている。英国では地域で働く看護職のなかでヘルスビジタ-が母子保健の重要な役割を担い、vulnerable familiesの子どもの保護を目的として活動している。Appleton J.V.らは'The concept of vulnerability in relation to child protection : health visitors' perceptions'や'Working with vulnerable families : a health visiting perspective'のなかで保健婦がvulnerable familiesにかかわる地域の唯一の専門職であり、vulnerable familiesをみきわめる重要な役割があること、しかしその援助にはdiversity とconflictが存在していることそしてそのための4つのヘルスビジタ-の役割を見出している。また、アメリカ合衆国においてはZerkh J.V.が熟練保健婦への面接を通して子どもを暴力やネグレクトから保護するために必要な保健婦の責任としてempowerment とcoercionというみかけは矛盾する活動が援助関係において同時に存在することを示している。 これらの文献からの知見をもとに保健婦による明確な援助方法が確立されているとは言い難いわが国における保健婦の家庭訪問での援助内容を分析することが必要である。 2.面接調査 以下のような内容について面接で聞く(テープ録音を含む)とともにケースへの援助の概要については別のシートに記入していった。 ・ケースの概要(保健婦がケースをどのようにとらえているか、虐待の種類も含めて) ・虐待を疑った理由-対象とした親子(家族)のどのようなところがなぜ気になったのか ・虐待と判断した根拠、判断時困難だったこと ・家族に対する最初の援助内容、その援助を選択した理由、その援助を実践するときの保健婦の思い ・援助に対する家族の反応、その反応をどう解釈したか 現在これらの面接内容を分析中である。
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