本研究における本年度の目的は、整形外科術前術後に車椅子移動を余儀なくされる患者に対する;リハビリテーション看護プログラムを考案することであった。参加の同意を得た中年女性6名に対し、一定リズム(1ストローク/2秒)による車椅子移動を直線距離60mの往復コースにおいて約10分間連続的に行わせ、その時の筋活動をホルター式筋電図計で測定し、筋電図積分値(iEMG)増加を筋疲労の指標とした。同様な測定を行った昨年度の若年女性の結果では、僧帽筋、三角筋、上腕二頭筋および脊柱起立筋に特異的に筋疲労が生じる傾向が見られたが、本年度の中年女性を対象者とした場合では、iEMG増加の個人差が大きく、対象者間で同一傾向を示さなかった。また、同じ被検者を用い、車椅子-ベッドおよび車椅子-便座の往復移動をそれぞれ6回程度(約3分間)行わせ、その時の全身負担度を心拍数を指標として測定した。その結果、心拍数は約40〜50%HRreserveを示し、車椅子からの移動時に負担が大きいことが明らかとなった。主観的評価においても上肢に負担がかかることが示唆された。これらのことから、車椅子使用前に上肢を中心としたリハビリテーション看護プログラムが必要であると思われた。プログラムは、ベッド上で座位および臥位で実施可能なものとし、ストレッチングおよびゴムチューブを使用した筋力トレーニングが適当と判断して検討した。
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