研究課題
基盤研究(C)
本年度は、肺がん患者のセルフケア状況とセルフケア遂行に関わる要因を明らかにすることを目的に、化学療法を受けながら入退院を繰り返している患者を対象に調査している。面接法を中心にして、1.自分の健康状態の認識、2.健康や幸福の回復・維持のための意志決定、3.健康のために実施している行動などについてインタビューを行っている。データ収集の途中であり、最終的な分析結果が得られていないが、11名の患者(1名の面接回数1-5回)から得られたデータから、患者のセルフケアのカテゴリーとして以下の7つの傾向が示されている。1.<体力の維持>であり、「残っている肺は使わないと余計ダメになる」との認識によって呼吸回数を見ながら運動したり、食事内容への注意、無理をしないなどがあった。2.<状態悪化の徴候の監視>対象者は全員自分が肺がんであることを認識していた。ちょっとした痛みや体重減少に敏感に反応し、受診したり医師に相談していた。CTや血液検査の結果も現在の状態把握の指標にしていた。また、痰が詰まって呼吸ができなくなったときの対処方法を考えている人もいた。3.<苦痛症状のコントロール>鎮痛剤を指示通りに内服したり、痛みを記録し、受診時に医師に示して鎮痛剤の増量を求めていた人もいた。4.<治癒・状態改善への取り組み>癌の縮小を期待して化学療法を積極的に受けたり、様々な民間療法を取り入れていた。5.<日常生活の常態化>化学療法に伴う不快感や倦怠感があっても、孫の世話や家事、趣味の継続をすることで、いつもの自分を取り戻そうとしていた。6.<外観の調整>カツラやできるだけおしゃれをすることで脱毛や病気を持っていることの心理的負担を軽減しようとしていた。7.<気分のコントロール>人との接触で生きる充実感を高めたり、気功や書物で自らを鼓舞し、死の不安やイライラの軽減をしていた。なお、患者のセルフケアには家族の存在が重要な意味を持っており、目下アンケートにより家族がセルフケアにどのような影響を持っているかについても調査中である。