研究者らは、在宅重症心身障害児(者)(以下重症児(者))の療育外来を国立療養所A病院にて月に2回実施しながら母親への支援のあり方を検索している。開設当初は4組の親子であったが現在は10組の親子が参加しており、今後も増加していくことが予想される。研究を発展させていくために以下のことに取り組んだ。(1)在宅重症児(者)の療育の現状と母親への支援状況を把握するために療育拠点事業である在宅重症害児(者)通園事業実施施設5施設を訪問した。在宅重症児(者)にとってどこかに所属しているという安心感につながっているが、ひとつの施設がかかえる地域が広すぎる、スタッフがたりない、通園や訪問の希望者が多くゆきとどかないなど多くの問題があった。(2)在宅重症児(者)通園施設として22年の歴史をもつA学園に通園している母親に対して療育内容の満足度や今後の希望などについてアンケート調査を行ったところ母親たちはある程度満足しているが母親自身への支援の重要性が明らかになった。(3)研究者らが実施している療育外来の母親に対して療育内容の満足度や今後の希望などを聞いたところ、療育に対する期待が大きく療育外来の回数の増加を希望していることがわかった。(4)さらに全国の国立療養所および公法人立の重症児(者)施設に対して支援内容および現状を把握するために現在アンケート調査を行っている。 療育外来における母親支援の実際とその成果 (1)母親の個別相談を実施することにより、家族の問題や親の高齢化に関する悩みか大きいことが明らかになった。(2)グループで語り合いの場をもつことによって母親は語りあう楽しさを感じるとともに自己をふりかえる機会になっている。(3)1泊2日の合宿を行うことによって人間関係が深められた。(3)療育に季節の行事を取り入れたことにより親子で楽しい時間がもてた。(4)ボランティアによる音楽会を開催した。(5)母親を子どもから解放し自由な時間与えることによって心身ともにリフレッシュできるようである。(6)母親にノートを渡し、母親の思いを自由に記述してもらうことにより、母親自身の本音が把握できるようになった。 母親は療育に参加する感想を次のように述べた。「母親たちとの交流が深まり楽しい」「療育に行くと気分が軽くなる」「肩の力をいれずに参加できてこころがおだやかになった」「相談ができる所ができたので悩むことが少なくなった」「体調がよくなった、明るくなっていきいきしているといわれる」などである。開設当初からみると親子共に活気がみられ表情も明るくなり、療育が安心できる場になっているようである。また母親自身が自分の生き方に関心をもったり自己をみつめる機会にもなっている。子どもから離れられなかった母親がスタッフに子どもを預けて外出できるようになったり、短期入所を気軽に利用できるようにもなってきた。しかし障害児を生んだ負い目や子どもに対する強いこだわり、とりこみを示す母親もおり、今後の支援研究に対する課題である。
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