研究者らは、昨年に引き続き国立療養所で在宅重症心身障害者に対する療育外来を行い、母親支援を実施している。療育に参加する親子は、開設当初は4組であったのが現在は13組と増加した。 本年度は、全国の重症心身障害児(者)病棟を有する国立療養所80施設に対して在宅支援状況、支援による養育者の変化、および今後の支援のあり方などについて知ることを目的として、アンケート調査を行った。その結果、58施設から回答を得た。そのうち在宅支援を行っている施設は46施設であった。その内容として、「専門外来」21施設、「グループ療育」11施設、「デイケアサービス」5施設、「短期入所」44施設、「訪問サービス」11施設であった。国立療養所の在宅支援は、平成3年頃より増加傾向にあった。養育者の変化としては「安定」と「自立」が多かった。しかし重症児(者)の自宅から施設までの距離が遠いという問題があった。関係施設は、重症児(者)の居住地の近くに存在することによってスムーズなサービスが提供できるため、今後増加が予測される民間施設との連携が必要である。さらに関係職員は、人的資源の確保と支援内容の拡大と充実の必要性を感じており、在宅支援に対して積極的な姿勢が見られた。 さらに、研究者らがかかわっている療育外来に参加している母親13人に対して「療育に対する満足度」などについて、アンケート調査および聴き取り調査を実施した。母親たちは、「医療機関に併設されていることによる安心感がある」、「心配事などが相談できる」、「母親たちとの交流が楽しい」、「月に一回のレスパイトが楽しみ」などをあげた。ある母親は、「子どもの障害が重度であるために軽度障害児と常に比較し、負い目を感じていたが、徐々に重度障害を受け入れられるようになった」と自己変容の自覚をあげている。さらに、母親は、療育外来に参加することによって、「子どもを一人でかかえこまない生活が送れるようになった」、「自分自身の楽しみに目を向けられるようになった」など、開設当初から見るとかなりの変化が見られた。母親たちの希望としては、重症者は、養護学校終了後に行く適切な施設が少ないために、療育外来の開催回数とレスパイトの増加を希望している。また地域に毎日通える施設の設置を切望していることが明らかになった。
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