在宅重症心身障害児(者)の療育を行う中で、母親のストレスに注目した「療育相談モデル」の開発研究に取り組んだ。 方法 : (1)全国の主な通園拠点事業施設を訪問し、療育内容について聞き取り調査を行った。(2)通園施設の母親から療育に対する満足度についてアンケート調査を行った。(3)重症心身障害児施設を有する全国の国立療養所に対して、在宅支援および養育者への支援状況などに関するアンケート調査を行った。(4)国立療養所A病院に療育外来を開設した。(5)母親支援として個別相談・グループカウンセリング・ノート交換などを試みた。 成果 : アンケート調査結果ではスタッフの在宅支援に対する意識の高まりが見られるが、母親支援を重視し、実際的に機能している施設は皆無であった。また母親自身の満足度は低い。本研究者らが母親支援を重視した療育外来を行った成果として、母親が自覚した変化は、(1)精神的な安定感(明るくいきいきとしてきた・気分が軽くなった・楽しみができた・安心感がある・子どもと離れることができるようになった・子どもに余裕をもって接することができるようになった、など(2)身体的な変化(体調がよくなった)(3)福祉サービスが気軽に利用できるようになった。さらに、母親たちの協力体制の確立、自己の生き方や養育姿勢、および社会に関心を示すようになり、主体的な生き方が志向できるようになってきた。 結論 : 養育者である母親の心身の安定は、子どもの養育に決定的な影響を与え、QOLを高めることになる。療育は、具体的な母親支援を機能させ、療育に包括させなければならない。
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