研究課題/領域番号 |
09672433
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研究機関 | 名古屋市立大学 |
研究代表者 |
松下 美恵 名古屋市立大学, 看護学部, 教授 (30241201)
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研究分担者 |
古田 真司 愛知教育大学, 教育学部, 助教授 (90211531)
鈴森 薫 名古屋市立大学, 医学部, 教授 (80117829)
堀田 法子 名古屋市立大学, 看護学部, 助教授 (90249342)
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キーワード | 胎児診断 / 胎児治療 / 悲嘆反応 / 心理テスト / 意識調査 |
研究概要 |
前年度から引き続き、胎児診断のために受診している妊婦と夫(家族)を対象とした、縦断的調査を進めるとともに、平成9年度からの調査の集計・検討を行った。また、正常経過にある妊婦と夫(家族)の生活史と心理テストの調査、次世代を担う大学生に対する胎児治療についての社会的受容の現状を探り、以下にまとめた。 胎児異常の告知を受ける母親も悲嘆反応を示すが、異常児出産や流死産により現実的な対象喪失を体験した母親と比較し、感情体験や病的な悲嘆反応を示す人が少ない。胎児異常の告知を受ける場合、母親にとって胎児は形成過程にあるイメージであり、精神的対象喪失'アイデンティティの喪失'体験がおこるためと考えられ、流早産の場合に比べ「児のことを空想する」感情体験、「否認する」悲嘆反応が、特徴的に多い結果ともなった。また、悲嘆反応は子どもがいない場合や有職者において強く見られ、正常妊娠経過の母親が心理的支援を必要とする場合と反対の結果となった。有職者にとっては休暇を取ったり人に尋ねられる事がストレスであり、また自己価値や自己象を高め誇ることができる精神的対象を失うことは、育児経験や愛着対象によって救われていると考える。 大学生(一般学部・法学部・医学部・看護大学)において、「胎児治療を知っていた」のは半数の50.6%で、男性に限れば17.6%であり、未だ社会的認知は低い。しかし、胎児に異常がみつかった場合、92.6%は「胎児治療を希望」し、学生の大半は"治療可能であるならば最善を尽くす"気持ちがみられた。ただ、胎児治療の知識とともに異常や障害というネガティブな情報も有しやすく、その場合人工妊娠中絶を選択する傾向もみられた。反対に、生命倫理について考察する機会のある学生では、胎児の存在を尊重した選択をしており、情報の提供と充分な説明が、改めて示唆された。
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