研究概要 |
みそ汁の風味は過度の加熱により著しく損われる。今年度はみそ懸濁液から揮発し、その上部に存在する成分head-space volatile(HSV)を対象とし、加熱による味噌懸濁液の香気の変化を検討した。また、味噌香気に極めて重要な影響を及ぼすことが確認されているHEMF(4-hydroxy-2(or 5)-ethyl-5(or 2)-methyl-3(2H)-furanone)の加熱による分解と味噌汁の風味劣化の関係についても検討した。 試料には赤色辛口系米みそを用いた。みそ懸濁液を加熱しながら、HSVを直接Tenax TAに吸着させるカラム濃縮法と、みそ懸濁液を40℃と70℃それぞれに加温し、窒素ガスを吹き込み、HSVをTenax TAに吸着させる動的ヘッドスペース法により、香気濃縮物を調製した。調製された香気濃縮物はGC(FID-FPD)、GC-MS分析された。また、各香気成分の定量的な変化は内部標準法によって算出した。 その結果、みそ懸濁液は加熱時間が長くなるにつれて、主要香気成分の3-methyl-1-butanolと2-phenyl-1-ethanolは揮発し、新たに2-butenal,methional,furfuryl alcohol,HMF(4-hydroxy-5-methyl-3(2H)-furanone)が形成され、これら成分のHSVでの濃度が高くなった。また、みそ懸濁液を40℃と70℃に加温した場合、70℃のHSVでアルデヒドやケトンの増加が顕著であった。みそ懸濁液にHEMFを添加し、加熱するとHSV中には2,3-hexanedioneが増加した。2,3-hexanedioneは不快臭をもっており、HEMFの分解がみその風味劣化にも関与していると推察された。以上より、加熱により減少する成分と新たにHSV中に形成される成分とがあり、バランスが崩れ、みそ汁は香気が劣化すると判断された。
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