研究課題/領域番号 |
09680006
|
研究機関 | 東京農工大学 |
研究代表者 |
石井 泰博 東京農工大学, 農学部, 助教授 (90015090)
|
研究分担者 |
野村 義宏 東京農工大学, 農学部, 助手 (10228372)
白井 邦郎 東京農工大学, 農学部, 教授 (70107168)
|
キーワード | 靴の湿熱環境 / 靴の微生物叢 / 着用靴の衛生 / 足の常在微生物 / 靴素材の水分保持 / 汗成分の蓄積 / 足の発汗 / 汗成分の分解 |
研究概要 |
吸水度は同じで、水の移動(拡散)が大きい天然皮革(牛皮と豚皮)と移動が小さい不織布の人工皮革を甲部位と裏(靴内部の甲裏と中敷き)部位に用いて天然皮革および人工皮革製の婦人用靴を2種類製作し、それぞれの靴について180時間の着用実験をした。汗由来のナトリウムイオンとクロルイオンは、天然皮革靴内部の中敷き爪先や踵部位を中心に全部位に蓄積した。これに対して人工皮革は爪先や踵部位に著しく蓄積することを認めた。この結果から、靴素材の水移動性能と足から分泌された汗成分の滞留とが関連している可能性を明らかにした。 靴内部の生菌数は、ほぼ10^4/cm^2のオーダーであるが、天然皮革より人工皮革で多い傾向がある。特に、人工皮革の甲裏部位に多い特徴を見出した。微生物の種類は、皮膚常在菌であるグラム陽性細菌StaphylococcusあるいはMicrococcusがいずれの靴からも検出された。天然皮革では、主に真菌(カビ)Penicillium属とAspergillus属が着用120時間あたりから生育するようになった。人工皮革には、Fusarium、Cladosporiumなどの土壌やハウスダストに由来する種類が検出された。アミノ酸、尿素、乳酸、ヒスチジン、無機塩を混合した人工汗液天培地に繁殖する着用靴から分離した微生物株は、多くがStaphylococciに属する細菌で、Penicillium属も数株あった。これらはアミノ酸とグルコースを代謝していた。以上の研究結果から、水分移動がしやすい素材の靴では足が接触しない靴先部位や靴箱に保管中のカビが繁殖しやすく、水分を保持するポーラスな材料では細菌数が多いという靴内の環境を、微生物叢から確認することができた。
|