本研究は幼稚園において2年間に渡る縦断的観察研究を行い、個々の子どもの視点から幼稚園における人間関係の個人史の様相を明らかにすることを目的とする。このため入園から卒園まで、幼稚園の1クラスの観察・調査を行った。本年度は昨年度に引き続き、ビデオ資料の文字化及び数量化、文字資料(フィールドノート・聞き取り)の整理とコンピューター入力を行った。こうした資料から、複数の子どもを対象として、それぞれの子どもの園における主な遊び、自身のいざこざの解決方法や他児のいざこざへの対処、仲間入りの仕方、昼食での他児との関わり等について、行動とその変化を検討した。さらにそれぞれの子どもの園生活でのキーパーソンともいえる人物(他の子どもや保育者など)を特定し、こうした人たちとの間の重要なエピソードを分析した。またそれぞれの子どもにとっての園生活における「事件」ともいえるような重要な出来事を同定し、その出来事が起こるに至った経緯、出来事自体の様相、その影響等について分析を行った。さらにそれぞれの子どもに保育者がどの様に関わり、人間関係の体験を援助しているかも検討した。分析の結果にもとづき、人間関係の個人史を数名の子どもについて再構築した。また一方で、園生活における縦軸である個人史に対し、園生活の横軸といえるいくつかの相互作用場面を取り上げ、その場面の意義や機能についても検討を行った。本年度までの成果の一部は、既に「子ども社会研究」等に発表した。また本年度の成果の一部は発達心理学会・保育学会で順次発表する予定である。
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