本研究は、高齢者居住施設の冷暖房時の温熱環境の実態測定から、冷暖房設備の管理、運営方法、改善方法について検討することを目的としている。平成9年度では、研究対象の施設(新潟県3施設、愛知県1施設)に対し、冷暖房の方法等についての聞き取り調査を実施し、冬季において暖房時の実態測定を行った。実態測定は小型温湿度記録装置を用い、記録したデータをパソコンに出力し検討を加えた。4施設とも天井カセット型のファンコイルユニットが設置されており、冷暖房が可能となっているが、2施設については暖房は床暖房も設置されていた(1施設は一部の居室であった)。暖房時の実態測定を要約すると、以下の通りである。 1.晩秋から初冬の頃は日中のみの暖房を行うところが多く、夜間の温度が低くなっていた。 2.ファンコイルユニットによる暖房の居室ではどの施設でも垂直温度の差が大きく、設定温度が24℃前後と高めであった。 3.床暖房室では垂直温度差は少ないものの、設定温度はファンコイルユニットでの暖房室と同程度の温度であった。 4.職員が入居者の健康状態などをみながら室温の設定を行っている様子も見受けられたが、自分自身の感覚によるところも多く、そのため、やや高めの温度環境になっていると推測された。 5.相対湿度50%前後をようやく維持できている施設は加湿装置のある1施設のみで、他の施設では相対湿度が30%以下になることが多く、乾燥感を訴える職員も多かった。 以上のことから、設定温度の若干の低下と加湿の提案を施設側に行った。今後、その効果を検証していくことにしている。
|