前期高齢者の半数以上は有配偶者であり、これらの人々が日常生活の中で抱えているストレスを分析することは、高齢者の幸福な老いを追求するために重要である。本研究は高齢有配偶女性の生活ストレスの様態とその軽減に関与する諸要因を、家族ストレス研究の分析枠組みや測定尺度を用いて明らかにするとともに、社会資源としてのソーシャル・ネットワークに注目して分析することを目的としている。 本年度は昨年実施した「高齢有配偶女性のストレスに関する調査」を詳細に分析すると共に、典型的な事例を抽出した詳細な面接調査を実施した。これらのデータから高齢有配偶女性のストレス構造と、心理的ストレス反応に対するストレッサー(家庭におけるストレッサーと想定される日常的出来事)、リソース(夫婦の同伴行動、夫婦相互の情緒的サポート、世帯外のネットワークおよびネットワークからの援助など)、家庭生活観、役割アイデンティティ、生活満足度、家庭生活のストレーンなどの影響を分析した。 心理的ストレス反応を従属変数、年齢、職業、世帯構成など9つの社会的属性を従属変数とした分散・共分散分析の結果では、世帯年収のみが有意な影響を及ぼしていた。また、8項目を加算尺度として用いた家庭生活ストレッサー(レンジ11-39、平均20.1 SD=5.74 α=.81)とも有意な関係(r=.29)を示した。さらに、リソースを中心としたサポート・ネットワーク関係の6項目を独立変数とした分析では、夫婦相互の情緒的サポート、社会活動への参加状況の2変数が心理的ストレス反応に対して有意な効果を示した。これらの変数を一括投入する多元配置の分散・共分散分析の結果、世帯年収の効果は消失した。
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