研究概要 |
東南アジアおよび照葉樹林帯には多くの民族が生活しており、特有の食生活を営み、特有の伝統的な発酵食品が存在している。それらの地域から採集した微生物の検討・保存や食品の調製その代謝産物の人体への影響を目的に研究を遂行した。その結果、東南アジアの魚醤から分離したBacillus subtilisFS-2はコラーゲナーゼ活性を持つものであり、その酵素を精製し、諸性質を検討した。培養上清からDEAE-Sepharose CL-6B CM-cellulose、Buty-Toyopearl 650M、SephadexG-75などのカラムクロマトグラフィーで酵素を精製し、電気泳動的に単一な酵素標品を得た。本酵素の反応最適条件はpH8-9、50℃であり、ゲル濾過により分子量を測定した結果、推定分子量は125,000であった。また、SDS-PAGEにより分子量60,000-62,000のサブユニットからなる2量体酵素であった。EDTAにも活性を示し、活性は2-メルカプトエタノールで阻害された。本細菌の生産する酵素は、酸カゼインのAsn、Gly、Val、Ile部位を切断し、また、アレルゲンたんぱく質の一つであるグリアジンやαs-カゼインを分解する事が明らかになった。 また、小麦粉発酵食品から分離した微生物を用いて饅頭を調製し、その塩可溶性たんぱく質の低アレルゲンの可能性を検討した。饅頭のRAST抑制率は対照区と比較すると約20倍の抑制が認められた。このことは伝統発酵食品中の微生物の相互作用を検討することにより、さらに低アレルゲン化食品の可能性を示すものであった。
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