研究概要 |
9年度の研究では,市販のスパイスを含むハーブを粉末化し,油に5%(w/v)添加し,約2ヶ月室温溶出後,ハーブを分離した油(ハーブの脂溶性成分が溶出した油)について酸化安定性(自動酸化およびフライ加熱を想定した熱酸化安定性)を調べ,無添加油に比べ,顕著に酸化安定性が高まる結果を得た.10年度は9年度に引き続き,ハーブ添加油のハーブ溶出条件および生体モデル系での活性酸素捕捉能を数種の活性酸素について調べた.また,これらハーブ油を食品として利用する場合の嗜好性について各種調理で検討し,以下の結果を得た. 1) ハーブ脂溶性成分の油への溶出条件をクローブ,オールスパイス中のオイゲノールの溶出量を指標として4℃,30℃で静置溶出した.その結果,30℃溶出で,10〜14日で,オイゲノールの溶出量がほぼ一定となり,しかも油は4℃溶出油と同様,42日静置後も全く酸化されていなかった. 2) 活性酸素捕捉能について,9年度の食品系で酸化安定性の高かった7種のハーブ添加油についてDPPH・,OH・,O^2などを測定した.その結果,実験に供した7種のハーブ油すべてがDPPH・捕捉率50%以上を示し,特に,クローブは90%以上の捕捉率であった.OH・についてもDPPH・の場合と同じ傾向がみられた.しかし,O^2はハーブ添加によって捕捉活性の増加はみられなかった. 3) ハーブ添加油の食品への利用としてドレッシング,ソテー,にんじんのグラッセ,スポンジケーキ等に添加し,調理品の官能検査を行った.その結果,オールスパイス添加油はすべての調理で好まれ,クローブ油はソテーとスポンジケーキで,クミン油,フェンネル油はソテーで特に好まれていた. 以上,ハーブ添加油は無添加油に比べ,酸化安定性が高く食品への利用も可能であった.
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