研究概要 |
油脂(脂質)の酸化は食品の品質劣化のみならず生体内においても老化や癌化,生活習慣病などの要因でもあることから,油脂の酸化を防止することが重要な課題となっている.本研究ではリグナンを含むゴマサラダ油に15種の粉末化したハーブ・薬草を油の5%添加し,1〜3ケ月浸漬し,脂溶性成分を溶出させた.各ハーブの香気成分・色素成分も油に移行しているものが多く,paprika添加油は顕著な赤色を呈ししていた.各油の機能性を抗酸化力を指標に評価した.自動酸化安定性では,無添加油に比べどのハーブ油も酸化安定性が著しく高まり,cloveなど4種のハーブ添加油が特に高かった.clove中のオイゲノールは油に多量移行していることがHPLCで確認されたが,トコフェロールとの相乗作用は認められず,オイゲノールとゴマ油の抗酸化物質セサミノール,トコフェロールとの相加的作用により酸化安定性が著しく高まったと推定された.フライ油として使用する場合の熱酸化安定性はfennelなど3種の添加油が高いこと,ほのかなハーブの香気もあることから,フライ油としての利用の可能性が示唆された.このような新しい高抗酸化性油は食品系の酸化を防止するのみならず生体モデル系においても,活性酸素由来の毒性脂質過酸化生成物を無毒化する可能性が示唆された.ハーブ等の抗酸化成分の化学構造と脂質過酸化生成物抑制機構については現在検討中である. ハーブ添加油の食品への利用としてドレッシング,ソテー,グラッセ,スポンジケーキ等へ添加して官能的評価を行った結果,オールスパイス添加油はすべての調理で好まれたが,その他は調理に.より好まれるものと好まれないものがあった. 以上,ハーブ添加油は無添加油に比べて,酸化安定性が著しく高まり,食品への利用も可能であった.
|