本研究は、最適な福祉衣料の設計を目指して、その基礎となる素材性能の明確化を企図した。ここでは、寝たきり高齢者・乳幼児用紙おむつと、枕の性能設計に着目した。 紙おむつについては、市販の紙おむつ49種類を試料として、紙おむつの肌触りに関与する圧縮特性、表面特性、熱伝達特性、含水特性について、乾燥状態と含水状態での特性値の範囲を明確にした。また、母親と女子大学生を被験者として、紙おむつの肌触りの良否に関する主観評価を行った。乾燥状態での肌触りの評価は表面特性と相関が高く、摩擦係数の変動や表面粗さの値が小さい紙おむつの肌触りが良いと評価された。含水時の肌触りの評価は、液戻り量、圧縮特性、厚さ・重さと相関が高く、液戻り量が少なく、圧縮柔らかく回復性が良い紙おむつの肌触りが良いと評価された。乾燥状態と含水状態における紙おむつの肌触りを、圧縮特性、表面特性、水分移動特性からの客観的に予測するための実験式を提案した。 枕の性能設計については、寝心地に関与する枕の力学特性として圧縮特性に着眼し、枕の圧縮特性および各種充填材料の圧縮特性と枕の寝心地の主観評価との対応づけを検討した。形態や充填材料の異なる市販の枕25種類を試料とし、成人女子31名を被験者として枕の寝心地の主観評価を行った。主観評価と枕の接触面積、頭部に加わる圧力との関係については、接触面積が大きく、頭部にかかる圧力が小さいほど、柔らかく、なじみが良いと評価された。主観評価と枕の圧縮特性との関係は、圧縮仕事量WC、最大圧縮量△Tの対応が得られた。WCや△Tの値が大きい枕ほど柔らかく、なじみが良く、総合評価が良いと評価された。充填材料固有の圧縮特性は枕の硬さの評価と概ね対応する傾向にあるが、粒子間の滑りの影響も考慮する必要が示唆された。
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