本研究は、最適な福祉衣料を設計するための素材性能の明確化を目標とした。なかでも、寝たきり高齢者や乳幼児用紙おむつど枕の性能設計に焦点を絞り、以下の研究成果を得た。 紙おむつについては、着用快適性に関与するギャザー部素材の肌触りの良否と力学特性、表面特性との関係を捉えた。市販の乳幼児・大人用紙おむつ61種類を収集して試料とし、紙おむつ脚部のギャザー部を切り取り、KES-FB計測システムにより引張り、曲げ、圧縮、表面特性を計測した。また、全試料中から30種類を選び、成人女子30名を被験者として脚ギャザー部素材の手触りによる肌触りの良否の5段階評価を行った。紙おむつギャザー部素材の手触りによる肌触りの良否の評価値THVは、表面摩擦係数の変動MMD、圧縮仕事量WC、曲げ剛性Bと強い相関が示された。MMDが小さく滑らかで、WCが大きく圧縮柔らかく、Bが小さく曲げ柔らかいギャザー部素材の肌触りが良いと評価された。THVはMMDの対数変換した値の二次回帰式にあてはまることなど、相関分析によって肌触りの良いギャザー部の素材特性の範囲を明確にした。 枕については、温熱的寝心地に関わる枕充填素材の有効熱伝導率、水分移動を同時に伴う熱移動と通気抵抗の測定方法を検討し、各種充填材料のこれらの測定値と特徴を明らかにした。繊維状充填材料の有効熱伝導率は他と比較して小さく、また通気抵抗が大きいことや、ポリエチレンの中空粒子は通気抵抗が特に小さいことなど各種充填材料の特徴を明確にした。また、ポリエステル、羽毛、そば殻、パイプの4種類の充填材料を用いた平枕を試作して着用試験を行った。30分着用後の最高到達温度や冷温感の主観評価値と、充填材料の有効熱伝導率、枕の接触面積との関係を定量的に評価した。
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