本研究は、最適な福祉衣料の設計を目指して、その基礎となる素材性能の明確化を企図した。なかでも、寝たきり高齢者や乳幼児用紙おむつと、寝具類を代表して枕の性能設計に焦点を絞り、以下の研究成果を得た。 紙おむつの性能設計については、肌触りの良否に関与する圧縮特性、表面特性、熱伝達特性について、含水による性能変化の範囲と特徴を捉えた。そして、肌触りの良否の主観評価との対応により、乾燥状態と湿潤状態ともに肌触りが良いと評価された紙おむつの特性値の範囲を明確にした。また、乾燥状態と湿潤状態における紙おむつの肌触りの良否を、圧縮特性、表面特性、含水特性、構造特性から客観的に予測するための評価式を提案し、その回帰精度を確かめた。さらに、着用快適性に関与するギャザー部素材の肌触りの良否と力学特性、表面特性との関係を捉え、肌触りの良いギャザー部の素材特性の範囲を明確にした。 枕の性能設計については、寝心地に関与する枕の力学特性として圧縮特性に着目し、枕の圧縮特性および各種充填材料の圧縮特性と枕の寝心地の主観評価との関係を検討した。そして、寝心地の良い枕の圧縮特性、接触面積、接触圧の範囲を明確にした。また、温熱的寝心地に関わる枕充填素材の有効熱伝導率、水分移動を同時に伴う熱移動と通気抵抗の測定方法を検討し、各種充填材料のこれらの測定値と特徴を明らかにした。そして、ポリエステル、羽毛、そば殻、パイプの4種類の充填材料を用いた平枕を試作して着用試験を行い、30分着用後の最高到達温度や冷温感の主観評価値と、充填材料の有効熱伝導率、枕の接触面積との関係を定量的に評価した。 以上より、福祉衣料の快適性と素材性能の関係を捉え、最適な福祉衣料の性能設計の基礎的指針を示した。
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