研究概要 |
魚醤油は多くの食品加工における"隠し味"としての利用価値が高いが,受容性に難点のある臭気を矯臭して風味の良い魚醤油を製造するには,製造過程と製品品質保持の両面からの方策が必要である.本研究において,魚醤油の臭気発生原因の解明と臭気の発生防止の寄与して,微生物を利用した新しい食品加工技術の開発,多獲魚や魚加工廃棄物の有効利用に貢献する. 1.魚醤油の臭気成分分析と生成経路の検討 種々の魚醤油のヘッドスペースガスを主にパ-ジ・トラップ法(キャビラリーカラムを用いるGC/MS)で分析して臭気成分を同定した.2-メチルプロパナ-ル,2-及び3-メチルプタナ-ルなどの分枝鎖アルデヒドが特徴的に多く発生した.2-フランメタノールはイカ醤油に特に多かった.前述のアルデヒド類はG-カラムで簡単に分析でき,簡易な評価法として役立つことが分かった.魚醤油を空気中で振盪するとアルデヒド類は急激に増加することなどからストレッカー分解によってアミノ酸から誘導されるものと推測された. 2.臭気の矯臭方法の検討 鰹節菌(Eurotium属)と食品添加物の矯臭効果について検討した. (1)種々の食塩濃度下で培養した菌体を魚醤油(主に臭気の変化しやすいイカイシルを用いる)に添加すると,高塩濃度(10%)で培養した場合にアルデヒド分解能が顕著であった. (2)臭気成分(アルデヒド,含硫化合物等)との結合能(包接能)をシクロデキストリン(CD)やキトサンについて試験し,CDのアルデヒド包接能は低いが魚醤油の風味を改善した.キトサンはアルデヒドを吸着するものの風味改善しないため,魚醤油の独特な臭気は低分子アルデヒド以外の物質の可能性がある.
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