研究概要 |
家政学における染色分野の基礎理論を発展させて電子レンジを適用した染色の機構及び実践可能な染色方法を検討することを目的とする。試験布として各種繊維(木綿、麻、絹、繊維素繊維(指定外)、絹、羊毛、アセテート、ナイロン、ポリエステル、アクリル)を用い、植物染料(苺の果実、梔の果実、茜の根、玉葱の甘皮)、直接染料(Direct Sky Blue 6B,Direct Orange R)、酸性染料(Orange II,Suminol Milling Red GRS)、分散染料(Duranol Blue G)を用いた。染色は、電子レンジにより電磁波を照射する染色方法と侵染一般染法(各繊維に適した温度で染色)の2種類の方法で行った。染色した試験布の側色(Lab系の測定)は、色彩色差計(ミノルタ(株)CR-200Y)を用いて行い、染色布の色の濃さ、赤み・緑み、黄み・青みを調べて各々の方法の染色性を比較検討した。染着量は分光学的方法により求めた。結果は次のとおりである。1.電子レンジによる染色効果のある染料と繊維の組合せ:L値の測定結果より、植物染料と羊毛或いはナイロン、酸性染料のOrange IIと絹、分散染料のDuranol Blue Gとポリエステル或いはアクリルの組合せに効果が表れた。苺では木綿と絹に効果が見られた。直接染料では効果が認められなかった。2.電子レンジによる染色速度:電子レンジ染色約5分間の染色布の色の濃さ(L値)は、一般染法で1時間染色した場合にほぼ匹敵した。3.赤み(a値)及び青み・黄み(b値)に及ぼす電子レンジによる染色の影響:電子レンジ染色の効果がある染料と繊維の組合せでは各染料固有の赤み、青み及び黄みは、一般染法で染色した試験布より強くなった。4.Orange II、Duranol Blue Gの染着量:高周波照射時間に比例して増加した。これらの結果から、電子レンジ染色の機構は高周波照射による染料と繊維の極性や電子の遷移などが関係すると推測され、また、この方法は教育現場や家庭で簡便に実践できると考えられる。
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