電子レンジ加熱を利用した染色の機構及びこの染色方法の教材開発について検討した。電子レンジ加熱(高周波出力:500W、発振周波数:2450MHz)により種々の試験布を染色し、それらの染色布の色の濃さ、彩度、強度及び染色堅牢度について従来の一般染法と比較検討した。用いた繊維は、植物、動物、再生、半合成及び合成繊維であり、用いた染料は植物、動物、直接、酸性、分散染料である。染色布のLab系の測定には色差計(ミノルタ(株)、CR-200Y)を用いた。得られた結果及び考察を次に示す。 1. 染料と繊維のほとんどの組合せにおいて電子レンジ加熱による染色の方が一般染法より濃い色と高い彩度を示し、染色速度はかなり短縮された。 2. 高周波照射中の染料水溶液の温度が高く上昇する染料ほど電子レンジ加熱の効果が大きく認められ、また、その効果は繊維の結晶化度、軟化点、溶融点、誘電率及び染料の極大吸収波長に起因すると考えられる。 3. 綿、麻以外の染色布の織糸のヤング率はいずれの染色方法においても同程度の値になった。 4. 耐光堅牢度はいずれの染色方法によってもほぼ同じであり、洗濯堅牢度は電子レンジ加熱による染色物の方が良好であった。 5. 教材としての電子レンジ加熱による染色条件は、染料は赤みがかったもの、繊維はほとんどのもの、浴比は1:50から1:80であり、染色時間は約3分間であることが見出された。
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