研究概要 |
粘度などの物理的な特性や油相の存在が味覚に与える影響は、食品の調理、加工において重要である。そこで本研究では、乳化食品の油相による呈味性への影響を研究するために、まず、エマルションの安定性について検討した。続いてスープのようなコロイド分散系食品の粘度と味覚について検討した。さらに、粘度を高めるのに日常的に使用されるデンプンについて味覚強度への粘度の影響を検討し、また、油相による呈味性への影響を検討し、以下のような成果を得た。 1, 乳清タンパク質エマルションにレシチンを添加することにより、中性ではより安定なエマルションが得られるが、酸性では安定性が低下することがわかった。 2, 高圧調理したゼラチン濃度の高い鶏ガラスープは高粘度であったが、味覚への顕著な影響はみられなかった。 3, デンプン溶液の粘度の味覚に及ぼす影響を調べた結果、低粘度では味覚強度があまり変わらなかったが、高粘度ではデンプン溶液の塩味や甘味の強度が低下することが明らかになった。 4, 油脂を70wt%含むエマルションの粘度を測定した結果、味覚強度に対する影響が弱い範囲にあった。しかしこのエマルションは、等濃度の食塩水よりもはるかに強い塩味であった。油脂を70wt%含むエマルション(0.9wt%NaCl)と、その水相と等濃度の食塩水(2.66wt%)を比較した結果、水溶液の方が塩味強度が強かった。これらの結果より、等濃度の食塩を含む場合、エマルションの方が水溶液よりも塩味を強く知覚されることが明らかにされ、エマルション中では水相の食塩濃度が高くなり塩味を強く知覚するが、一方、油滴が味蕾による知覚を抑制する効果もまた働いていることが示唆された。
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