抹茶は5月に製造された新茶(碾茶)を約半年間ほど冷暗所にて熟成保存させた後、粉末化した方が抹茶らしい風味が増すが、その理由については明らかではない。抹茶は一般に泡茶と言われているように、気泡度が高く、泡の安定なものほど、外観、口あたりも良く美味と感じる。そこで、本年度は碾茶熟成による抹茶泡立ち性への影響について検討した。碾茶を25℃と10℃の2条件下、各々含気包装と窒素充填包装で0〜6ヶ月間暗所で保存した。酸化反応の指標となるビタミンCは、窒素充填保存より含気保存の方が保存期間が長くなるにつれてより減少した。また、両保存条件共に10℃よりも25℃の方がビタミンCは減少した。抹茶泡立ち性は、6ヶ月含気保存した碾茶から調製した抹茶が最も泡立ちが良く、次いで6ヶ月窒素充填保存による抹茶、保存していない碾茶からの抹茶の順であった。両保存条件ともに碾茶保存温度による差はなかった。抹茶溶出液の粘度、溶出液中のべクチン量は6ヶ月間一定であった。界面活性を示すサポニンの溶出量は、保存期間が長くなるにつれて、また窒素充填保存よりも含気保存の方が増加した。両保存条件ともに碾茶保存温度による差はなかった。さらに、ペクチンとサポニンの溶出量が各々異なる2種類の抹茶の泡立ち性は、ペクチン溶出量の多い抹茶よりもサポニン溶出量の多い抹茶の方が泡立ち性が良かった。以上の結果より、碾茶の保存による抹茶泡立ち性の向上に大きく関与している成分はサポニンであると推察した。更に、碾茶を酸素存在下で保存することによりサポニンが溶出されやすくなり、その溶出量増加の結果として抹茶泡立ち性が向上し、泡沫が抹茶にまったりしたまろやか感を与えると推察した。
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