若年女子100名を対象に、体つきごとに腰部衣服形状基本モデル(包絡面モデル)とその展開図との関係を詳細に調べた結果、個人個人の腰部を集団の中で分析する際の注目点について、具体的な指標を特定化し、これにより適合度の高い下半身用衣服の設計に結びつく情報を得た。これを元に特定の腰部形状を呈する被験者を選出して実際に衣服を製作し、抽出された下半身用衣服設計要素を確認するために着用実験を行った。以下に主な結果を述べる。 1.腰部形状の特徴は、主として軟部組織の量的、あるいは位置的変異、そして腰部に包含されている寛骨および椎骨の矢状方向での位置的変異などを要因としていると考えられた。ただし、皮下脂肪等の軟部組織が外形の注たる構成要因となっている腰部では、脊柱彎曲の変異と上肢帯の位置的変異が体つきに明確な影響を及ぼす上半身とは異なり、個人ごとに非常に広範囲なヴァリエーションを呈していることが分かった。それゆえ、上半身のような明確な体つきの分類は困難であったが、主として胴部から腰部に至る体表面形状の特徴的傾向が、包絡面モデルの展開図上では、曲面を平面に近似的に展開する際のいわゆる「切れ込み」の位置と向きと大きさにある程度規則性を帯びて現れることが分かった。 2.体つきごとの展開図の「切れ込み」の特徴を衣服の曲面化に使用する「ダーツ」設定の基本とした腰部衣服パターンを設計した。この3次元形状に基づくパターンと従来の設計法によるパターン、ならびに包絡面モデルの展開図自体を元に、特定の腰部形状を呈する被験者用のストレートスカートを数種類制作して着用実験を行い、被験者の官能量および観察者による視覚的評価によって、パターン設計法の評価を行った。その結果、腰部という3次元形状の特徴を考慮に入れて抽出された衣服パターン設計要素に関して、体への適合度、着心地を含めた有用性が確認された。
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