研究概要 |
多量のアルミニウムを摂取すると一部が吸収されて脳に蓄積し,神経毒として作用する可能性がある.したがってアルミニウムの摂取と吸収の関係を調べることは人の健康を維持する上で重要なことといえる. 著者らがこれまでに行った実験から,アルミニウムはポリフェノールや食物繊維,シュウ酸と結合して体外に排泄されやすいこと,またポリフェノール化合物にシュウ酸が加わるとアルミニウム結合量が増加することを明らかにしてきた.そこで今回はアルミニウムに鉄またはカルシウムイオンが共存したときの有機酸またはポリフェノール化合物との結合について検討した. 有機酸はクエン酸,シュウ酸,リンゴ酸.酒石酸,酢酸の5種を,ポリフェノール化合物はエピガロカテキン.エピガロカテキンガレート,エピカテキン,エピカテキンガレート,クロロゲン酸,タンニン酸を用いた.総アルミニウムは原子吸光光度法,アルミニウムイオンはエリオクロムシアニンR吸光光度法およびクロムアズロールS吸光光度法で測定した. その結果,(1)アルミニウムは5種の有機酸とポリフェノール化合物との結合において同程度の濃度の鉄イオンが存在しても影響を受けないことが認められた.(2)アルミニウムに同濃度のカルシウムが共存しても4種の有機酸およびポリフェノール化合物とアルミニウムとの結合に影響は認められなかったが,リンゴ酸においてはカルシウムイオンが共存することで,アルミニウムとリンゴ酸の結合量が増加した.(3)鉄イオンまたはカルシウムイオンと有機酸およびポリフェノール化合物との結合景は,それらとアルミニウムとの結合量に比べて著しく低いことが認められた.
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