本年度の研究目的は、一般住宅の台所計画にとって重要な一指標である収納空間の標準化を実施することである。 この目的にそって、アンケート調査を実施し、台所で使用されている食器、調理器具、調味料、貯蔵食品など約450品目の所有、使用状況、入手方法、収納状況などについての分析をおこなった。調査対象家庭は、約10年前と同様にほぼ同じ階層である女子大学の学生の家庭である。本研究では、特に1987年次の調査結果との比較により、経年による台所を中心とした生活用品の変化をとらえる。その変化の特徴をまとめると以下のようになる。 食器に関しては所有率、使用頻度ともに低下の傾向にある。平均所有数についても約1/2〜1/3の数量に減少している。調理器具については前回所有率、使用頻度の高かった品目には変化はみられないが、食器と同様全体的に所有率が低下するという傾向がみられる。一方主要調理器具に関しては、使用頻度が増加しているなどである。以上のことから、総体的に所有総数量が減少し、必要なものだけ所有するという傾向へ変わってきていると言える。また調味料・保存食品などはその利用度が増加しており、食の多様化、調理の簡略化などが伺われると言う結果が得られた。 なお現在上記の結果から、一般住宅における現在の標準所有品目及びその数量などを決定し、収納空間の標準化(スペース量の算定)を試みているところである。 この他、次年度の高齢者のための台所計画の研究の方向性を探るため、一部高齢者の台所の実態についての予備的調査も事例的におこなった。今回の対象者が高齢であっても、日常的にはかなり健康である人、あるいは多少身体的に高齢化による影響を受けている人であっても、長年台所作業に従事してきたということから使用している台所に対する認識・関心が非常に低いということが明らかになった。したがって次年度の研究では、調査対象者の選択が大きな課題となると言える。
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