本研究者は先に、大麦穀粒の表面近くから得られる分級粉中にアミノペプチダーゼが存在する事を見いだしている。ここでは、その精製を確立し、諸性質を明らかにし、その利用のための基礎データを蓄積することを目的としている。 大麦のアミノペプチダーゼは、95-85%分級粉から、冷アセトン処理、酢酸緩衝液抽出、硫安分別、Sephacryl S-200-HRゲル濾過、PEIイオン変換、ヒドロキシアパタイトクロマトグラフィー、そして、Sephacryl S-100HRゲル濾過の過程によって精製された。 精製酵素標品の至適pHが各種の合成基質を用いて検討された結果、いずれの基質に対しても、pH7.0-8.0の間にあった。ロイシン-p-ニトロアニリドを基質としたとき、至適pHは7.0、Km値は0.22mMであった。p-ニトロアニリド基質では、フェニールアラニン基質としたときに反応速度が速く、ロイシンの場合の2.4倍であった。イミノ酸や塩基性アミノ酸に対しては、ロイシンの場合の約1/3であった。酸性アミノ酸は基質とならなかった。β-ナフチルアミドを基質では、フェニールアラニン-β-ナフチルアミドでは、至適pH8.0でKm値0.047mMであった。p-ニトロアニリドよりはβ-ナフチルアミドに対して親和性が大きく、イソロイシン-β-ナフチルアミドでKm値0.15mM、セリン-β-ナフチルアミドでKm値0.57mMであった。酸性アミノ酸のβ-ナフチルアミド基質は加水分解されなかった。チオール酵素阻害剤であるロイペプチンでは阻害されなかった。以上の結果から、本酵素は、Mikola and Mikolaの分類ではニュートラルアミノペプチダーゼに分類されると結論される。
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