研究概要 |
高密度リポ蛋白質(HDL)は、末梢組織の余剰のコレステロールを肝臓に逆輸送し、異化させる働きを有し、心筋梗塞や動脈硬化を防ぐ重要な蛋白質である。HDLの動脈硬化予防に果たす役割を解明するためには、コレステロールの逆輸送による最終運搬場所の肝臓細胞膜のHDL-レセプター(レセプター)の同定とその分子解明が必要である。本研究では、レセプターの分子解明を行うとともに、その臨床診断への検討と食生活による動脈硬化予防評価法の開発をめざして、本年度以下のことを明らかにした。 (1) ウサギ肝臓細胞膜分画より、レセプターの精製を試みた。しかし、ウサギ肝臓細胞膜分画には、分子量120kDaのHDL-レセプターの含量は非常に少ないことがわかった。 (2) 次にラット肝臓細胞膜分画より、レセブターの精製を試みた。肝細胞膜分画の調製には従来ミクロソーム分画を用いていたが、核分画より調製する方法の方がHDL-レセプターの収量はよいことがわかった。そこで、ラット肝細胞膜分画を0.5%トリトンX-100で可溶化したのち、DE-52カラムクロマトグラフィーを行った。レセプターは、0.2MKCI溶出画分に見い出された。これを,Wheat germ lectinセファロース6MBカラムにかけ、よく洗ったのちに、0,5MN-アセチルグルコサミンを含む緩衝液で溶出した。その精製蛋白質をさらに調製用電気泳動装置を用いて精製を試みた。SDS-PAGEで単一な分子量120kDaの日DL-レ七プターを得ることに成功した。気相のアミノ酸シーケンサーで分析したが、N-末端のアミノ酸が検出されないことから、N一末端がブロツクされていることが考えられた。今後、HDL-レセプターの内部のアミノ酸配列をペプチド分離精製後、検討する必要がある。 (3) HDL-レセプターのcDNAを単離するために、現在HDL-レセプターの抗体を調製中である。ラット肝臓のtotalRNAを調製し、cDNAライブラリーを作製した。125,000個のプラークを得た。強い抗体が作製できれば、抗体スクリーニング法でcDNAライブラーより、HDL-レセプターのcDNAを単離したい。
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