平成9年度はマタタビ果実の高血圧改善効果について、アンギオテンシン転換酵素(ACE)の阻害活性を指標として活性化合物の単離を試みた。まず、マタタビの関連植物の抽出物のACE阻害活性を測定した結果、同じマタタビ科でも、コクワ果実は活性が低く、マタタビ葉とキウイ果実にはほとんど活性がなかった。マタタビ果実の抽出物では、水抽出物が最も高い活性を示したので、ここから分離を進めた。Sephadex LH-20によるゲルろ過、続いてCM Sepharose CL-6Bによるイオン交換クロマトグラフィー、さらにNH_2系および逆相系の高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を用いて示差屈折計検出器で分析・分離し、ほぼ純粋な活性物質を得た。 現在、各種機器分析によりその構造の解明を試みているが、クロマトグラフィーでの挙動あるいは過去にACE阻害物質として報告されている化合物から類推して、低分子量のペプチド様物質ではないかと考えている。 また、ゲルろ過とイオン交換クロマトグラフィーによる分離で活性が2カ所に分散したので、活性化合物が複数存在していると考えられ、現在それらについても探索中である。 マタタビは加工品として食用に供されることが多いので、加工品のACE阻害活性を調査し、果実酒や砂糖漬においても活性を確認した。また熱に対しての安定性も調査し、ジャム作りにも適していると結論した。 北海道産の野生果実のスクリーニングの結果から、マタタビ以外にも高血圧改善効果を示す果実エキスがあり、これらについて、マタタビの場合と同様にして活性物質の分離精製を開始した。
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