平成10年度は、マタタビ果実の高血圧改善効果について、アンギオテンシン転換酵素(ACE)の阻害活性を指標として、水抽出物から得た活性化合物の構造決定を試みた。各種機器分析を行なったが、その構造の解明に十分な情報が得られなかった。そこで、いくつかの化学反応をして構造解析する必要が生じた。また、血圧調節は動物の複雑な体内反応の結果なので、アンギオテンシン転換酵素の阻害のみに由来するものではなく、したがって試験管内の酵素阻害試験ばかりでなく動物実験も行なって、効果を確認する必要がある。このため活性化合物の量を確保する目的で、マタタビ果実の大量抽出と活性物質の精製を行なった。 マタタビ加工品のACE阻害活性をさらに調査したが、北海道や秋田県で生産されているマタタビワインや、新潟県で生産されている塩漬では高い活性は見られなかった。ジャムや砂糖漬などの果肉を多く含む加工品に高い活性が見いだされた。 北海道産の野生果実のスクリーニングの結果から、マタタビ以外にも高血圧改善効果を示す果実エキスがあり、特にコマガタケスグリ、エゾスグリなどについて、ACE阻害活性を指標として活性成分をほぼ純粋な形で得た。 北海道産の数十種類の野生果実の水抽出エキスに対し、ヒト前骨髄性白血病細胞HL-60に対する分化誘導能のスクリーニングを行なったところ、いくつかの果実で活性が見いだされ、がん予防効果を持つことが示唆された。
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