研究概要 |
酢酸発酵過程中の各種アントシアニン色素(AN)の変化と安定性について検討し,以下の結果が得られた。 "(1)"発酵前のエチルアルコール量は6%であった。酢酸発酵が進んでくるとエチルアルコール量は減少し酢酸量が増加した。発酵21日後の酢酸量は5.0〜5.5%であり、pHは平均2.27であった。 "(2)"褐変度は酢酸発酵中僅かに減少するが,大きな変化は認められなかった。 "(3)" 酢酸量の増加に伴いアントシアニンの吸光度は増加し、21日目で最高に達した。その時の各種ANの増加率はいちごANが約5倍,シソANが3倍,さつまいもANが約2倍,エルダーベリーANとブドウ果汁が約1.5倍となった。その後日数の経過に伴い減少傾向を示した。 "(4)"発酵前の色調に比べて,発酵21日後a値,b値がブドウAN以外正に移行した。また明度と彩度の関係から発酵21日目までの色調変化はうすい赤色から濃い赤色へと変化した。発酵60日目まではくすんだ赤色になった。 "(5)"主要ANの構造はLC/MSの色素成分分子イオンの質量数,フラグメントイオンの解析およびHPLCの相対保持時間により,エルダーベリーはシアニジン(Cy)3-サンブビオシド,ブドウ果汁はデルフィニジン 3-グルコシド,いちごはペラルゴニジン 3-グルコシドと推定した。 "(6)"酢酸発酵21日後のAN相対的残存率はシソのシソニン56%,マロニルシソン17%が最も不安定であった。エルダーベリ,ブドウ,いちご中の主要ANの相対的残存率は64〜72%であった。さつまいもANのCy3-カフェオイルは(caf)とソフォロシド(sof)-5-グルコシド(glu)とペオニジン(Pe)3-caf sof-5-gluは有機酸が1個結合したアシル化ANである。それに比べ,この両ANにコーヒー酸以外ρ-オキシ安息香酸,コーヒー酸、,フェルラ酸のアシル化酸が1個多く結合したアシル化ANは安定であった。また有機酸種類によりANの安定性に差があった。
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