1.加熱用食材モデル系の試作・調製とその熱物性: 加熱操作に対する食材の成分的要因のうち特に水分の影響を顕在化させるため、単純な組成で加熱中の形状変化が少なく、水分量の制御が可能な一連の食材モデル系を調製した。等量のココア粉末と小麦粉との混合物を、任意の混合比の水とコーン油とからなる液体相中に分散させた系であり、系全体に対する水分量が7%〜50%の範囲で変化してもそれぞれのヤング率は10^5Paのオーダーを保持する一方、水分量の増加とともに比熱容量は2.5〜4.0 J・kg^<-1>・K^<-1>、熱伝導率は0.2〜0.4W・m^<-1>・K^<-1>の範囲でそれぞれが規則的に増大する。したがって、これらの値からモデル系の熱拡散率は水分量に応じて6〜9X10^<-8>m^2/sの範囲で推移すると試算されるが、これらの熱物性値は次年度の熱流束測定に基づく伝熱諸係数の評価に資する予定である。 2.食材のような分散系の熱伝導率、比熱容量および一次元方向の熱流束各測定装置の製作と性能の検討: 食材モデル系の熱物性及び加熱による系内の熱移動の状況をそれぞれ測定するための装置を製作し、上記試料を対象に測定精度と再現性を調べた。熱伝導率測定装置は直線状平行熱流下、ポリカーボネートを基準物質に用いた相対的測定法を測定原理とするもので、試料厚さ5mm、温度勾配約5℃を最適条件とする。一方、市販金属製保温瓶を用いて水熱量計(水当量0.024kg)を製作し、比熱容量の測定に供した。一回の測定に約1時間を要するが、測定精度、再現性とも良好であった。現在、加熱中の試料内部の熱流を一次元方向に絞って追跡できる装置の試作を完了し、その性能を検討するため、上記のモデル系を対象に温度100℃から約200℃の範囲で内部温度分布の加熱時間による変化を比較観測中である。
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