研究概要 |
調理における多様な食材の加熱法を出来る限り束一的に理解し,食材内部を熱が移動する現象を定量的に解析するため,操作モデルとして食材の加熱面からその内部一次元方向の熱移動の測定が可能な下記仕様の加熱装置を作製し,これを昨年度に試作・調製した食材モデル系および数種の実用食材に適用してそれらの内部における熱移動速度を比較検討した。すなわち, 1.容器の壁を介して食材を加熱する方法を間接加熱,食材が熱媒体に直接触れる形式の加熱法を直接加熱と位置づけ,それぞれ加熱面から垂直の一次元方向へ0mm,1mm,3mm,および5mmの各位置での温度変化が測定できる加熱装置を作製した。直接加熱に用いた熱媒体は,蒸し,茹で,揚げ,天火各加熱に対応させ,加熱水蒸気,沸騰水,加熱コーン油および加熱空気である。 2.この加熱装置の使用により,間接および直接各加熱のいずれの場合にも,試料加熱面近傍での温度〜加熱時間の関係,あるいは試料の各種相変化に伴う熱伝導形式の変化等に関する情報が,再現性良く得られた。 3.対象試料の種類や水分量,あるいは上記加熱法の違いを越え,測定された試料内各部の温度上昇曲線は,熱移動に遅延現象が伴うものとして新規に導出された指数関数式にいずれも良く適合することを見い出した。 4.上記指数式に現われるところの遅延時間に対応した時間定数は,試料加熱面からの距離の関数であるが,その距離が一定の場合,加熱実験の対象とした食材モデル系や実用食材に固有の熱物性値である熱拡散率との間に密接な関係が存在することが実験的に認められたので,これを定式化することにより,調理加熱に際し食材の内部加熱面近傍に生じる温度変化を予測し得る可能性があるとの結論が得られた。
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