[目的]足部の生理機能からみた履心地の良い、快適靴設計の基礎資料を得ることを目的として方法に示す2つの実験を行った。 [方法]実験1:靴の水分移動特性の違いが自律神経活動に及ぼす影響を検討するためのモデル実験として30℃、50%RH環境下で空気孔の直径0.0(面積比0.0%:A)・1.2(1.1%:B)・4.0(12.5%:C)mm/cm^2及び12.0(28.3%:D)mm/4cm^2の4条件のポリエチレンフィルム足袋着用時の足部皮膚温、足袋内温湿度、心拍変動、主観評価の測定を被験者7名を対象に行った。実験2:25℃、50%RH環境下でヒール靴(上部開放型)・スポーツ靴(上部密閉型)の被覆面積の異なる靴着用時の安静・歩行時の皮膚温、靴内気候の測定を5名の被験者を対象に行った。 [結果]1.穿孔フィルム足袋着用による足部皮膚温、袋内温度は密閉型(A)の場合上昇がみられるが、他の条件については有意な変化は見られなかった。2.足袋内湿度は密閉型(A)の場合90%、(B)では71%、(C)では53%、(D)では50%と空気孔の直径が大きくなるに伴い袋内湿度の低下を生じた。3.足袋着用と着脱時の心拍変動との間には有意な差が認められ(P<0.05)、空気孔の直径が大きい、すなわち被覆面積が大きく、透湿性が小さいほど、蒸れを感じ交感神経促進(LF/HFの増加)の傾向が見られた。4.被覆面積の異なる靴の着用実験の結果、着用前と着用後の足底部皮膚温の差はヒール靴0.3℃、スポーツ靴0.9℃であり、被覆面積が大きい靴ほど皮膚温の上昇が有意に大であった。(P<0.01)。しかし、趾部皮膚温はヒール靴着用で低下傾向がみられ、ヒール靴が趾部を圧迫することによる血流抑制を引き起こすことが示唆された。5.靴着用により靴内の温湿度は上昇するが、上部開放型のヒール靴では歩行に伴うポンピング作用により温湿度の低下がみられ、歩行終了後の上昇も少ない。
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