平成9年度には、まず22℃、28℃、34℃、各50%RH条件下における足部温熱生理特性を検討した。22℃の低温暴露では血管収縮による皮膚温の低下がみられ、特に趾先、踵で著しく低下した。一方34℃高温暴露では皮膚温の上昇がみられ、部位差、個体差共に小さかった。蒸散量は足底側と足背側で異なった特徴的傾向がみられ、特に足底側は気温に関係なく多かった。足部の生理反応は足部の保温・冷却が身体深部の体温調節と関連し、全身性の快適感や健康をも左右することが示唆された。次いで、靴の熱・水分移動特性を評価するためのモデル実験として、透湿性の異なる穿孔ポリエチレンフィルムで作製した足袋着用時の足部生理反応及び足袋内温湿度の測定を行い、足部を覆う材料の透湿性、通気性の履物内温湿度への影響、さらには皮膚温にも影響を及ぼすことなどを明らかにした。平成10年度には、靴着用時に生じる圧迫が履き心地や快適性、疲労に及ぼす影響を自律神経活動(心電図のR-P感覚変動)から検討した。その結果、圧迫の強いストッキングやヒール靴着用は足部形状を変化させるばかりでなく、交感神経活動レベルの上昇をもたらし、全身性に影響を及ぼすことが示唆された。また、靴内汚染と一般細菌増殖との関係を靴の構造及び着用日数との観点から調べ、靴内菌数は連続着用4日目以降から急激な増加傾向を示し、足背より蒸散量の多い足底程、被覆面積が大きい程靴内細菌数の多いことが明らかとなった。平成11年度は、靴の水分移動特性の違いが自律神経活動レベルに及ぼす影響について検討し、被覆面積が大きく透湿性が小さい程蒸れが感じられ、交感神経活動レベルの上昇傾向がみられた。最後に応用実験として、開放型ヒール靴・上部密閉型スポーツ靴の着用実験を行い、着用靴の構造の違いが足部の皮膚血流量・皮膚温にも影響を及ぼすことなどを明らかにした。
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